難民問題を考える上で参考になる
タイトルだけ見るといかにも共産主義体制下の暗い話を想像しがちですが、本書の大半は著者の日本での半生について記されています。著者は15歳で家族とともに日本に亡命し、日本の中学・高校・大学を経て、現在は医者として日本に定住しています。 本書によれば、ベトナム戦争終結から15年後までに、日本に定住したインドシナ難民は約6000人。そのうち7割がベトナム出身で、残りはカンボジアとラオスの出身者が半々。本書が書かれたのは1990年なので、現在ではさらに定住者が増えているとは思いますが、それでも難民の受入国として十分でないことは言うまでもありません。数十万単位で受け入れている欧米諸国とは比べ物にならず、受け入れられても、学業や就職において、日本では様々な悪条件が難民に対して付きまとうことが多い。カンボジア出身者が中学や高校で苛めに合った話は本書以外で度々目にしますし、バブル期に受け入れた外国人労働者がバブル崩壊後に真っ先に切り捨てられた事実などは、この国がいかにアウトサイダーを許容しない国であるかを、如実に示していると言えます。 そうした暗い話をよく聞いていただけに、本書の内容には温かみがあります。中学・高校での先生や友人、トラン一家の生活を支援した地元企業など、著者と交流した日本人には温かみのある人が多く、読んでいて嬉しくなりました。色々問題はありますが、日本も少しずつ変わり始めているようです。 インドシナ難民の数は以前より減りましたが、今後も多くの北朝鮮難民が流出するでしょうし、日本も官民問わず支援しなければならないのは事実です。難民を受け入れるだけでなく、彼らが難民ではなく1人の日本人として不自由なく定住できる国家をどのように築くのか。色々考えさせられる1冊です。
貴重な定住体験
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中央公論社
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